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校長便り (5月)

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校長便り   (5月)

レオ・レオニは、「スイミー」をはじめ絵本好きの方にはおなじみの著名な絵本作家ですが、数多い作品の中で私が最もお気に入りの作品が、「フレデリック~ちょっと変わったねずみのはなし」 ご存じの方も多いかもしれません。


簡単に内容を紹介すると ある牧場に住んでいるねずみたちが、まもなく迎える冬の準備のために一生懸命働いています。無事に冬を越せるだけの食料や寒さをしのぐ藁集めに余念のない仕事ぶりです ところがフレデリックと呼ばれるねずみだけが目を閉じ日の光を浴びたり、色とりどりの花畑を眺めていたりして、仲間のねずみとは全く違うことをしているのです。仲間が尋ねます。「どうして君は働かないの」その問いかけにフレデリックは次のように答えます。「ぼくは寒い冬に備えて陽の光を集めているんだ。灰色の冬に備えて色を集めているんだ」「長い冬に備えて話が尽きないように言葉を集めているんだ」仲間はフレデリックに腹を立てながら去っていきます。やがて冬が到来し、初めのうちは食料も藁も豊富で楽しく冬ごもりをしていたねずみたちも、日がたつにつれ蓄えていた品々も乏しくなり、暗い気持ちに沈んでいくのですが、その時がフレデリックの出番です。集めてきたものを仲間のために語り始めると、ねずみたちは目を閉じフレデリックの言葉を通して陽の光の明るさや温かさ、野原に咲き誇る色とりどりの花々を想像し、彼の楽しい話に夢中になり心満たされたというお話です。


絵本のすばらしさは、子どもだけではなく大人にも心を響かせてくれる言葉や深みがあります。皆が同じ目的に向かって必死で働く中で、確かにフレデリックの仲間のようには働かず、一見無駄な時間を過ごしているかのような生活は非難こそされ理解を得るには難しいだろうと思います。もし、私たちの周りにフレデリックのような存在がいたなら……。


一人ひとりが同じ働き方をしなくても、自分らしい個性を大切にすることで仲間のためにできる仕事があること、食料集めという目に見える働きもとても大切ですが、目に見えない心の豊かさのための働きもあることに気づかされます。
自分のなかにある個性や特性が、他の人の喜びや希望、慰めや心の豊かさにつながる働きのために生かせたら、素敵だなと思います。