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校長便り (9月)『台風と 同じ旅程と なりしこと』
校長便り (9月)
『 台風と 同じ旅程と なりしこと 』 (稲畑汀子)
夏休みの後半は、台風10号に翻弄される日々でした。各地方を襲った局地的大雨による災害、私の故郷でも土砂崩れによって犠牲になられた方がいました。
台風の影響による公共交通機関の運行停止や遅延などによる陸や空の混乱に、多くの人が予定や計画の変更を余儀なくされたことでしょう。私も人生初めての体験でしたが、岡山から岡崎への道中新幹線が突然運転停止、動き出したかと思ったらまた停止…従来ならば3時間近くで到着するところが6時間以上もかかり、まさに俳人稲畑汀子さんの「台風と 同じ旅程と なりしこと」の句がぴったりの旅になってしまいました。
有名な俳人高浜虚子を祖父として、幼いころから俳句を学んでいたという汀子さんは、聖心会の学校でカトリックの教育を受けられています。彼女の句風がカトリック信者としての信仰に裏付けされた明るさと謙虚さが特徴だと知り、稲畑汀子さんの句集を読みたくなりました。年齢を重ねてきたせいでしょうか。
最近、すっかり俳句の魅力にはまり、五・七・五の世界を楽しんでいます。全くの素人で単純に心に浮かぶ言葉や風景、自然の営みを17文字にしているにすぎませんが、春夏秋冬、四季折々に関連する行事や風物に触れながら自分の心の思いを17文字の世界に託しています。たかが17文字とあなどれない豊かさ、深み、句を詠む人の世界観や感性に感動を覚えます。
現代社会は、「物質的豊かさ」から「心の豊かさ」に重きを置く時代になってきたとの記事を目にして嬉しく思います。物質的豊かさを否定するのではなく、ICTの急速な進歩に伴う社会の変化は、教育現場も当然影響を受けていますが私には願いがあります。
それは、どんなに物事が効率化され手に入れたい情報が寸時に手に入る社会の中にいても、季節が移ろいゆくプロセスに見られる自然界の美しさや私たち自身の感受性を失わないということです。人間関係が希薄になっていると言われている今だからこそ自然界だけでなく人の心の機微をも感じられる心を育てたい。感受性が強いが故の悩みもあるでしょうが、「感じる心」「感じられる心」は恵みであることを伝えたいのです。